10pt≠10pt (2001.2.6作成, 2003.6.27修正)

慶應義塾大学 理工学部 物理情報工学科

内山孝憲


10pt≠10pt

和文と欧文を混植するばあい, もともと独立にデザインされている2つのフォントを使うことが多くなります. アスキー日本語TeXも例外ではありません. デフォルトでは, KnuthがデザインしたComputer Modernが欧文に使用されます. Computer Modernは, 1970年代以前の欧文学術雑誌で使用されているフォントによく似ています. 1980年代以降は, Timesのような印象のフォントが多くなっています.

独立にデザインされたフォントをそのまま混植すると, 欧文が小さく見える, あるいは欧文が浮き上がってみえる・沈んでみえる, ことがほとんどだと思います. 仮想ボディにおけるベースラインの位置や, 欧文のascending lineおよび descending lineの大きさに依存して, 見え方が違うはずです.

通常, DTPでは, 和文主体であれば, 欧文を修正します. ベースラインを少し下げたり, 文字の大きさを少し大きくしたりして, 和欧のバランスをとります.

アスキー日本語TeXでは, 欧文を修正せずに, 和文を小さくしています. 標準的に配付されているmin10では, 0.962216倍されています. 桁数が多いのですが, 様々なフォントを実測して, 何らかの計算で誘導された値であろうと推測されます.

TeXの1ポイントは, 1/72.27インチです. 通常のDTPでは1ポイントは1/72インチです. 1インチは25.4mmです. 同じポイントの文字でも, TeXのポイントが小さくな ります.

もともと, TeXのポイントが小さいことに加えて, 和文は0.962216倍されますから, 10ptで組んだものでも, 和文部分は欧文以上に小さくなります(10pt×0.962216×72/72.27≒9.59pt). TeXで作成すると, ワープロで作成したものより和文が小さくみえるのは, 本当に小さいサイズで印刷しているからです. 学会予稿などで, 文字のサイズを指定されているときには, このことを念頭においておくとよいでしょう.

さて, アスキーから配付されているものではない, JISメトリックを使う奥村さんのjsarticleではどうなっているでしょうか.

奥村さんのサイトから配付されているjis.tfmは, 0.962216倍の幅を持っています. jis.tfmに記述されている文字幅が入るjis.vfもそうなります. jsarticleでは, スタイルファイルのなかで0.961倍の記述があります. このことは, 0.962216×0.961倍されることになります. (TeXの)10ptで作成し たものは(DTPの)約9.21ptになります(約13Q, 1Q=0.25mm).

jarticleとjsarticleで(TeXの)10ptで作成したDVIについて調べたものを示し ます. 「拝啓」の2文字分です.

jarticle
135: fntnum14 current font is min10 
136: set2 18258("4752) type=0 h:=4063232+630598=4693830, hh:=297 
139: set2 14140("373C) type=0 h:=4693830+630598=5324428, hh:=337 
                                         ^^^^^^文字幅

jsarticle
132: fntnum31 current font is jis 
133: set2 18258("4752) type=0 h:=-4222+606003=601781, hh:=38 
136: set2 14140("373C) type=0 h:=601781+606003=1207784, hh:=76 
                                        ^^^^^^文字幅
TeXの10ptなら, 655360になります. 
0.962216倍で630598になります.
さらに0.961倍で606003になります.

実際に, DTPの10pt, TeXの10pt, jarticleの10pt, jsarticleの10ptに相当す るように入力したものを次の図にしめします. 図の作成には, Illustratorを 使いました. 一番上の行は, 欧文部分にフォントそのものの定義されている従 属欧文フォントを使っています. 2行目以降の欧文は, cmr10です(Type 1). 9.59ptになるのですが, 丸め誤差で9.58ptになっています.


■リュウミンライトの場合. デフォルトの従属欧文は, Times.


■平成明朝W3(Adobe Value Pack, PostScript)の場合.


■ヒラギノ明朝Pro W3(MacOS X public beta, OpenType (PostScript))の場合.


余談

PostScriptフォントは, 1000メッシュでデザインされています. 仮想ボディは,
(0,880)   (1000,880)
+----------+
|          |
|          |
|          |
|          |
+----------+
(0,-120)  (1000,-120)
です. ベースラインは, Y座標が0の位置です. モリサワのRyumin-Lightでは, 亜から瑤までの漢字で, 実ボディの位置は, 次のようになります.
     left  bottom right  top 
平  均  46    -86    955   825
最大最小   1   -119   1000   869
中  央  43    -89    957   826
ほぼ正方形なフォントであり, また上のサイドベアリングは, 55/1000程度であることが分かります.

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