JISメトリックのTFMは東京書籍で作られ, それを使用するスタイルファイルは, 松阪大の奥村さんが作成され, jsclasses.lzhとして配付されています.
JISメトリックは, min10などに比較すると, シンプルです. かなや漢字は全て全角幅です. 括弧や句読点は全角幅の1/2です. min10は, かなの幅が文字によってまちまちです. 「プロポーショナル」できれいに組版できるかといえば, そうなりません. もともとmin10には, 実在するフォントがありません(アスキー私信). 多くのフォントから平均的な値として, きめられているにすぎません. 実体のないフォントに対するプロポーショナルなデータでは, どのフォントで印刷すべきか, 分かりません.
また, min10 は, 高さと深さの和が幅より狭い定義をもっています. このようなフォントは平体なのですが, 通常の横書の文書で平体で組むことは考えにくく, 幅には仮想ボディの幅を, 高さ+深さには実ボディの平均的な値を使ったのではないかと推測されます. つまり, 幅が広い分は, 平均的な実ボディの幅が仮想ボディより狭い分ということになります.
JISのメトリックのファイルも, 平体でデザインされています. これは正しいデザインでしょうか(JISのメトリックは正方形(正体)だと思っていましたが, そうではありませんでした. 2001.2.6修正).
学術書などでは, 本文はべた組, つまり等しい幅のフォントでつめないで組むのが普通です. これらのことを考慮すると, JISのメトリックは, min10に比べると十分リーズナブルです.
さて, 実際に印刷につかうフォントは, 等しい幅でデザインされているフォントです. JISのメトリックにしても, JISのメトリックどおりのフォントがあるわけではありません. dvipsなどで行っている補正は, 開き括弧類では, 左側1/2を削るというものです. これは, 本当に正しい処理でしょうか. 補正は, virtual fontで行います.
少し画像が大きいので, 画像だけ, 別にしました. 興味があれば下の例を御覧下さい.
同じ文章をタイプセットしています. いずれもJISメトリックで組版していますが, 約物の補正量を, Ryumin-Lightのメトリックを参照して求めています. 前半がRyumin-Lightのメトリックを考慮しない補正, 後半が考慮する補正です.
JISメトリックを機械的に実現している現在の補正とRyumin-Lightのメトリックを考慮する補正の例
決定的な違いは, 開き括弧〈が, 文字間がつまったときに, 右の文字よりも左の文字に接近するか, それとも開き括弧は文字間がつまっても右の文字に接近したままであるか, ということです. □〈□□〉□の並びが分かりやすいでしょう. 1/2幅までつめられて組まれたときにも, 左の文字に接近しないように(全角幅のときの左右の空き---レフトサイドベアリングとライトサイドベアリング---の比率を保って), virtual fontを作成して印刷したのが後半です.
プロポーショナルな印刷ではもちろんのこと, JISのメトリックであっても, 本当にきれいに印刷しようと思うと, 印刷に使用するフォントの情報が必要です. また, TeXの組版につかう仮想的なフォント, つまりjis.tfmなどと実際に印刷に使うフォントの間の補正をするのがvirtual fontの役割です.
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